センター長挨拶
震災から5年を経て
みやぎ心のケアセンター センター長 小髙晃
東日本大震災から、5年が過ぎました。地震・津波・原発という3重の災害の後に、人々の生活や心と体の立ち直りの過程は未だ途上にあります。そして、大切な人々との別れや様々な喪失に伴う痛みや悲しみが癒されてゆくための道筋の、また途上にもあります。
大規模な災害が社会全体に与える衝撃の影響は広く深く長く続き、人々の生活や心と体は、ともすれば負の連鎖を起こしかねない危うさの中にあります。多様な心身の問題が出現していることも事実です。
しかし、こうした状況に対して、私どもの社会は手をこまねいていたわけではなく、様々な対策を講じてきました。行政、民間、ボランティア等の組織あるいは個々人が、生活基盤、経済活動、地域作り、医療・保健・福祉等の分野で、粘り強く着実な取り組みを重ねてきました。
みやぎ心のケアセンターは震災後の心のケアを行う組織として、震災の年の12月に発足し、現在に至りました。当初手探りで開始された事業は、過去の被災地の経験に学びながら、多くの人々との繋がりの中で、試行錯誤もありながら、一歩ずつ積み重ねをして来たように思えます。この間、被災された方々や被災地で支援に当たる方々の支援を行い、地域全体の精神保健に関わる、受け入れ対応する力を強めるための支援も進めてきました。被災沿岸部には出向職員を派遣し、地元自治体と共に支援のあり方を探り、訪問も行い、共に次の展開を考えてきました。震災から5年は瞬く間に過ぎたように思えます。
震災後の取り組みや対応は時間軸で明確に区切ることは難しいはずですが、仮に10年を一区切りとすれば、今は丁度折り返し点にさしかかっていることになります。私どもはこれまでの活動を振り返り、今後を展望し、今後5年間の具体的な活動を計画し再始動する時期にあります。精神保健領域の課題と目標を明確にし、宮城の地での具体的な実現までの道筋を、手探りの労を厭わず、粘り強く見つけ出す覚悟を確かめ、関係者・当事者の方々との丁寧な共同作業のなかで、作り出してゆく必要があります。
この世界で、あるいは人間の社会で、災害や困難は避けられないとしても、その先に喜びもあるのだという経験は、私どもの歴史に勇気と希望を残してくれるはずです。幾多の震災や困難の経験を通して、少しずつ、心豊かで懐の深い社会が実現することを目指して、今、地に足をつけた活動を進めたいと思います。皆様のご指導とご支援をお願い申しあげます。